2012年4月21日土曜日

北海道大学観光学高等研究センターの研究スタッフ等


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専任教員&スタッフ

 これからの観光として期待されて登場したエコツーリズム。それは「与える負荷を最小限に抑えながら自然環境を体験し、観光地に対して何らかの利益や貢献のある観光」で、いわば観光における「イノベーション」である。
エコツーリズムでは観光客が地域と深くかかわるので、そこにさまざまな相互変容が起きる。このダイナミックな観光を素材にして、地域と観光の関係を考察している。
 最近の関心は、地域が自律的にエコツーリズムを生み出すプロセスを解明し、そこから自律的な観光や自律的地域マネジメント実現の仕組みを解明してゆくことだ。それをモデル化することで、他の地域でも活用可能な示唆を見いだしたい。それが創造的で持続可能な地域の実現につながる。
 修士・博士課程では、実践に重きを置いたフィールドワーク主体の研究を目指す。そのために、在学中に実際にエコツーリズムや地域マネジメントが進められている現場に出かけ、地域のアクターたちとの交流の中で学びを進める。もちろん基礎知識も事前に十分学習した上で、成果の表現としての研究発表やプレゼンテーションでも腕を磨く。
 地域マネジメント研究で何よりも重要なことは「地域」の視点である。地域にこそ事実や知恵があるという思いが大切である。地域での実践と協働の中で、エコツーリズムや自律的な地域のマネジメント研究を楽しむことができる学生との、ダイナミックで創造的な協働を期待している。
 
敷田 麻実 Asami Shikida
担当分野/観光地域マネジメント論
サスティナブル・ツーリズム論
 

金沢大学大学院社会環境科学研究科博士課程修了。博士(学術)。金沢工業大学情報フロンティア学部教授を経て、2007年4月より北海道大学観光学高等研究センター教授。研究テーマはエコツーリズムと地域マネジメント。地域の自律的なマネジメントをテーマに、観光におけるイノベーションであるエコツーリズムの実現プロセスや、観光による地域創造の実践的な分析を進めている。

敷田麻実ホームページ

 


GSAスケジュールはどのように動作しますか

 「現代社会は果たして、未来の遺産を創出できているか?」これが私の問題意識である。
 「世界遺産」も、身近な「おたから」も、価値の本質に優劣はない。そして「遺産」は、いつの時代にもつねに創造され続けてきたものであった。自然遺産であれ文化遺産であれ、「遺産=ヘリテージ」とは、単に「祖先から遺された財産=モノ」を指す静的概念ではなく、「子孫に資産=モノ・コトを価値としていかに遺すか」を問う動的概念である。
 では、将来の遺産をいかにして創り出すのか? まずは、与えられた大切な遺産を真正=オーセンティックに継承することから始めねばならない。そしてそれらを真摯に見つめることで豊かな感性と価値理解の能力が育まれ、そこから、将来世代がさらに未来に伝えたくなる新たな価値の創造が可能となる。
 こうして現代の我々はもとより、将来世代が価値を創造し、さらにそれらを遺産として未来世代へ継承する営みが、私の考える「遺産創造」である。
 地域や社会が、本質的な意味で観光の発展を目指そうとすれば、自らが有する遺産の価値とその活用可能性=ポテンシャルを正しく認識し、その魅力を源に新たな遺産を創造していけるような個性的で誇りある将来ビジョンを描かねばならない。それには、遺産創造の主体となるべき民(市民)・産(民間)・官(行政)が、「遺したい資産」として「遺産」への発想の転換をはかり、それら多様な「遺産」の真正な価値を説明できる専門家を養成し、そしてこれら民・産・官・学の連携をコーディネートできる別次元の専門家を生み出す必要がある。
 地域をまたぎ、国を超えて活躍できるそうした専門家や、地域に寄り添って美しい国づくりの草の根を支える専門家を世に送り出していきたい。観光の創造とは価値の創造に他ならない、と私は考えるからである。

 

西山 徳明 Noriaki Nishiyama
担当分野/文化資源マネジメント論

遺産創造論

 

1961年福岡市生まれ。京都大学工学部建築学科卒。京都大学博士(工学)。九州芸術工科大学・九州大学教授を経て現職。歴史的集落・町並み保存、ツーリズム開発、文化遺産まちづくり/国際協力(ヨルダン、フィジー)、鳴砂保護など、国内外で地域還元型フィールド研究を展開。

 


シノベイトは何ですか?
 「地域課題の解決」。常にこれを研究活動の原動力とし、地域の構成原理を読み解き、現代を直視し、将来を描き、それに対応した仕組みづくりに取り組んでいる。
 まち、むら、しま・・それぞれには生活を営む人々がおり、地域が経ている歴史の1ページを描き、子や孫を育て、また次の歴史をつないでいく流れがある。その構成原理を読み解くため、地域を総体で捉え、環境や歴史によって培われた地域の物語りをもとに体系化した地域の文化遺産を明らかにする。そして、その地域の遺産を継承した人が日々の生活のなかでどう関係性を形成するのか。そして将来、継承する人が引き継ぎたいと望む仕組みづくりに取り組んでいる。
 その現代の方法論として、ヘリテージ・ツーリズムを適用した持続可能な地域経営のシステム構築ができるのではと考えている。地域を訪れる人や地域を応援する人を、ある時は無意識ではあるが否応なく、ある時は積極的な好奇心への対応、とさまざまなアプローチにより文化遺産を介して地域経営に取り込める仕組みとして、また地域内の様々な生業、産業、文化といった活動等をつなぐ仕組みとして研究を深めていきたい。
 これは、多様な価値観と活動を行う人々による目的意識の共有化といった現代の国際社会の運営においても重要な課題であるといえる。ここ観光学高等研究センターは、教育機関でもある観光創造学専攻を含めて、研究者、院生、関係スタッフ、連携する様々な機関や地域の多様さとそれらを連携するシステムは、まさにそれを「地」で行っている機関であると言える。その機関を最大限に活かしながら、活動を行っていきたい。
 

池ノ上 真一 Shinichi Ikenoue
担当分野/地域計画論

ソーシャル・キャピタル論

 

大阪・堺出身。「技術の人間化」を理念とする芸術工学を学び、現在は、都市・地域計画・まちづくりを専門。
前職は特定非営利活動法人たきどぅん(竹富島)、(財)日本ナショナルトラスト(東京都)と、NPO・NGO職員として文化遺産マネジメントに取り組む。沖縄・竹富島、岐阜・白川郷、東京・旧安田楠雄邸、鳴砂の浜(全国)、その他、「地域遺産」と「ヘリテージ・ツーリズム」をキーワードとした社会システムの構築等に取り組む。

 

 観光開発は地域開発の有効な一手段である。しかしそれは、諸刃の剣でもある。

 観光開発には、経済効果に加え、住民の誇りの醸成やアイデンティティの再認識を期待することができる。発展途上国においても、その豊かな自然や固有の文化をいかした観光開発が試みられている。しかし、技術や経験、人的資源が不足している国々にとって、その試みを地域の発展に結実させることは難しい。さらには、地域住民の関与なきままに進められる外発的な観光開発や、利潤追求に偏重した「人間不在の観光開発」が、地域の伝統的な文化の変質や地域住民の絆の弱化を招く危険性までも有するのである。


銀行reconcilliationは何ですか?

 そうした危険を回避し、「人間不在の観光開発」を克服するためには、まず地域住民自身が、損なわれてはならない地域の価値を認識することが重要であると私は考える。それも、地域住民の生活から生み出され、それと一体となって現在まで存続してきた遺産を評価することにより、地域住民の存在を遺産価値に位置づけることが必要である。そのような価値付けは、単なる自然や建造物などの特性を評価したものとは異なり、地域住民自身がその価値の創造主体であり、継承主体であることを明確にするからである。そのようにして価値が認識されて初めて、その価値とともに住民の生活を発展させるような遺産および観光マネジメントに対する指針が得られ、解決すべき課題も明確になる。

 途上国における様々な地域は、当然日本とは異なったコンテクストを有する。そのため、日本で行われている方法をそのまま適用しようとしても破綻を招くのみである。しかし、日本が培ってきた遺産マネジメントの理念や目的、方法を選択する際の考え方といった根幹的な部分を共有しつつ、支援することは可能であると考える。

 フィールドワークによる実践的な研究を通じ、学院の多くの仲間とともに知恵を出し合い、切磋琢磨しつつ、世界のある地域の人々が少しでもより幸せになったと感じることができるような国際協力を推進できることを心から願っている。

 

八百板 季穂 Kiho Yaoita
担当分野/文化遺産マネジメント、観光開発国際協力

 

神戸市出身。九州大学大学院芸術工学府修士課程を修了、修士(芸術工学)を取得。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士後期課程を修了、学位論文『発展途上国における都市遺産観光開発に関する研究』を執筆。博士(観光学)。フィジー諸島共和国やエチオピア連邦民主共和国を中心に、日本の技術と経験をいかした国際協力を展開中。

 


 

 私はこれまで山口県萩市をフィールドに、住民と協力して地域の"おたから"を発見し、それを地域の資源として価値付け、まちづくりに生かすことに取り組んできました。地域住民と相談しながらまちめぐりマップを作成したり、古い民家の蔵の民具を引っ張り出してカルテ化するというような作業に没頭する中で、住む人にとっては当たり前のものでも外の人には珍しかったり、逆に専門家では気づかない、住民の目だから発見できるものもたくさんあることに気付きました。私の研究は、そうして拾い上げた"おたから"をどうすれば訪問者に分かりやすく、住民が解説しやすい物語=ストーリーに組み立てられるかを探求することです。
 通っている萩の浜崎地区も「港で栄えた商家町」という物語で説明されています。この物語を説明するために住民がぜひとも見て欲しいと思う"おたから"は、指定文化財のような立派なものばかりでは決してありません。例えば、蔵から引っ張り出してきたオンボロな双眼鏡(右側の写真左上参照)でも、ある物語を説明するのに必要であればそれを上手に活用します。つまり、地域にある全ての資源をフルに、そして有効に使う方法を模索することが研究になるのです。
 私のもう一つの研究テーマは観光まちづくりの国際協力です。こうした実践のなかから生まれてくるまちづくりの手法をモデル化し、これを文化も慣習も宗教も全く違う中東ヨルダンのサルトという歴史的な町並みに技術移転してきました。家々を一軒一軒訪ね歩き、建物へ入り、ヒアリング、スケッチ、写真撮影を行ない、それらをデータベース化しました。この調査によって多くの住民が自分の家の価値に初めて気付き、そして「それなら隣のあの家も」と別の家を紹介してくれることで、最終的には約1,000軒もの歴史的建造物を発見できました。
 このような、博物館から飛び出した学芸員が地域を活気づけるような活動は、日本国内だけでなく国際社会においても求められています。ぜひ皆さんも、私と一緒に世界を駆け回っていろんな地域の魅力を再発見しませんか?

 

村上 佳代 Kayo Murakami

担当分野/文化資源マネジメント論

  東北芸術工科大学芸術学部歴史遺産学科卒、九州大学大学院芸術工学府芸術工学専攻環境・遺産デザインコース修了。博士(芸術工学)。3期、延べ1年半に亘り独立行政法人国際協力機構(JICA)青年海外協力隊員としてヨルダンハシミテ王国サルト市への国際協力事業を実践。前職は、特定非営利法人「NPO萩まちじゅう博物館」学術アドバイザーとして文化資源マネジメントの取り組みに関わる。
 


 日本が戦後の荒廃から復興し、高度成長期を経ていくにつれて観光の大衆化が起こりました。これにより観光の楽しさを多くの日本人が味わえるようになりましたが、同時にまた「どこの旅館も似たりよったりの料理」「上げ底の土産物」「有名スポットを駆け足で見て回るだけのツアー」「無秩序な観光開発」などに象徴されるような、観光の負の側面も顕著になりました。こうした弊害がもたさられた原因のひとつに、観光をする側は観光をたんなる「気晴らし」としてしかとらえず、観光者を受け入れる側は観光の「経済効果」にばかり目が行ってしまったということがあげられます。
 しかし、こんにちでは、そうした観光のとらえ方に対する反省と変化が起こっています。観光者は個性化・多様化し、そこでしか体験できないことにこだわるようになり、うわべだけの観光施設を敬遠するようになってきています。また地域の側も、地域文化に根ざした観光資源の提供や訪問者との交流を重視するようになり、「地域づくり」というトータルな構想において「観光振興」をとらえるようになってきています。このためには、地域マネジメントや文化デザインも視野に入れて「観光」を考えることが必要になります。

 さらに今後は、世界的な大交流時代への対応も課題です。これまで日本は、外国からのお客様を迎えることはあまり得意ではありませんでしたが、これからは積極的な受け入れが求められるようになります。そのためには「異文化交流」や「ホスピタリティ」に対する感覚も醸成・洗練されていかなければなりません。
このように、観光に対する意識が変わり、観光のもたらすものがなにかが改めて問われている中で、様々な可能性への模索と実践が各地で行われています。いわば「新たな観光の創造」が日本全体を挙げて進められているのです。
 「念彼観光力疾走」とは私の造語で、「観光の力を念じつつ、その発展に向かって進んでいく」という意味です。では「観光の力」とはなにか。ひとことで言えば、それはまず人と場所、ゲストとホストとを結びつける力です。そしてその力は、人々に活力を与えたり、自己の再発見をもたらしたり、地域の魅力を示すきっかけになったり、ネットワークの形成を導いたり、文化の創造を引き出したりといった様々な効果を生む源でもあります。こうした「観光が持っているパワー」に大きな期待を込めながら、ゲストとホストが共に幸せになる観光を探っていくのが観光学高等研究センターの大きな役割です。私も微力ながらこれに貢献できればと願っております。

 

松本 秀人 Hideto Matsumoto

担当分野/学術研究員

 

図書館情報大学図書館情報学部を卒業後、出版社勤務を経て、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院修士課程修了。2010年4月より観光学高等研究センター学術研究員。「観光と図書館の融合」をメインテーマにしつつ、観光系大学の現状やカリキュラム構成なども研究。

 


  髙橋吉文 Yoshifumi Takahashi
担当分野/国際文化形成論

  山田義裕 Yoshihiro Yamada
担当分野/国際言語コミュニケーション論

  清水賢一郎 Kenichirou Shimizu
担当分野/中国地域文化論

  宮下雅年 Masatoshi Miyashita
担当分野/北米地域文化論
  西川克之 Katsuyuki Nishikawa
担当分野/欧州地域文化論
 

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